2日目 PART4

まだまだ続く雲仙温泉旅行記雲仙地獄は観光地であると同時に、周辺のホテルへお湯を供給する源泉でもあるので、そこら中に送湯用のパイプが走っている。草木も生えぬ荒れ地とパイプラインの組み合わせは、一種異様な迫力があって圧倒される。どれくらい圧倒されるかというと、思わず写真を撮り忘れるほどである 。

それにしても、場合によっては100℃を超える熱湯と水蒸気が噴き出す場所にパイプを設置するのは、かなり大変な作業だったのではないかと思われる。体に悪そうなガスもあれこれ出てるだろうし。ただ「地獄は俺の職場だぜ」とか言うと、ちょっと日活ニューアクション的なカッコ良さがあって良いかも。← バカ

地獄の光景は、どこも概ねこんな感じ。左に写っている遊歩道を、もの凄い勢いで走り去る人がいて、思わず「逃げる奴は湯治客だ!逃げない奴は良く訓練された湯治客だ!ホント、雲仙は地獄だぜ!」などと口走る私。我ながら意味がさっぱりわかりません。んー「浸かる奴は湯治客だ!浸からずに飲む奴は以下略だ!」の方が良いかなぁ?← どっちもダメだと思われます

もうもうと上がる湯気で半ば隠された九州ホテル。ジョン・カーペンターの「ザ・フォッグ」か、キングの「霧」を思わせる光景ですな。個人的にはモンスター好きなので「霧」の方でお願いします。いや、お願いされても困るだろうけど。

泥火山」なるものがあると案内板に出ていたので、期待して見に行ったらこんなものが。直径20cmくらいの泥の盛り上がりをして「泥火山」と呼ぶとは、なかなかに良い度胸であると言えよう。昔、犬に細長いシッポを付けて「巨大ネズミ」だと主張する映画があったけど、それくらい良い度胸。その意気や良し (良くねぇ) ということで、できるだけアップで撮ってみた。ほら、こうすれば巨大な火山に見え …… ないよなぁ、やっぱり。

そんなこんなで地獄を堪能した我々。しかし、3月とは言え山の中、すっかり体が冷え切ってしまったので、近くにある足湯へ行ってみることに。裸足になって湯に浸すと、かじかんだ足がじんわり解凍される感じで、非常に気持ちがよい。しかし、吹きさらしの屋外では、暖まるのは足だけ。本来なら足の血管で暖められた血液が巡って全身ホカホカになるはずなのだが、風が強いせいか上半身は冷えていく一方だ。

「こりゃ、ちょっとツライなぁ」と思いながら湯から出る我々。しかし、その瞬間、足湯の真の恐怖が我々を襲った。濡れた足に冷たい風が吹き付け、もの凄い勢いで体温を奪っていくのだ。寒い。むちゃくちゃ寒い。早く足を拭かなくては凍えてしまう。だが手元には小さなハンカチがあるだけだ。少し離れた場所に100円で使えるタオルが置いてあるのに気付き、そこへ向かおうとするが、裸足のままでは地面が冷たすぎるし、濡れた足で靴を履くのは気持ちが悪い。

そうこうする内に、足は痛いほどに冷えきってしまい、耐えきれず湯の中に戻る我々。ジンジンと痺れるほどの暖かさが足を包み、強烈な心地よさに思わず声が出る。しかし、それも束の間のこと。湯から出れば足が瞬時に冷えてしまうことは体験済み。すぐにタオルで拭けば何とかなるが、地面が冷たすぎて置き場所まで到達できない。とどのつまり、今の状況を一言で表すとすれば ……

湯から出られません。

おお、何ということだ。手軽に温泉が楽しめるはずの足湯に、まさかこれほど恐ろしい罠が潜んでいようとは。出るに出られず、かと言って湯に入っていても上半身は冷えていく。まさに進むも地獄、留まるも地獄。おおおおおのれ謀ったな孔明← 濡れ衣です

もはや、このまま足湯に骨を埋めるしかないのかと思った (思うなよ) そのとき、アリア総司令閣下がタオルを取ってきてくれますた。あ、どうもすみません (いきなり冷静)。実は湯に浸かってたのは野郎共だけ。閣下とどんたれさんは簡単には脱げないストッキングを穿いていたため、傍観していたのであった。つまり、我々はストッキングに救われたわけである。ああ、ありがとうストッキング!素晴らしいよストッキング!愛してるよストッキング!…… って、単なるフェチ野郎か貴様。

つーことで、我々は見事孔明の罠 (だから濡れ衣だってば) を切り抜けたのであった。ちなみに「最初から閣下に頼めばいいじゃん?」というツッコミは却下だ。

さて、窮地を脱した我々は、ホテルの近くにある「ビードロ美術館」へ。温泉スパに併設された美術館で、入場料が700円っつーことで、いささか躊躇ったのだが、入って大正解。ヴェネツィアボヘミアの職人技が光る、美しいガラス器がずらりと並ぶ様は、まさに圧巻。特に、超絶的な技巧で作られたヴェネツィアン・レースグラスの酒瓶の美しさは、もはや溜息しか出ないほどだ。

鑑賞後に職員さんに訊ねたところ、300点に及ぶ展示品は、すべてオーナーの個人的コレクションなのだそうな。んーむ、すげえぞオーナー。入館前に「こういう場所の美術館で700円は高くね?」とか思っちゃって、ごめんなさいオーナー。でも、美術館を出た後だと、土産物屋のガラスがすごく安っぽく見えちゃうんで、館内レイアウトを一考した方が良いと思いますよオーナー。← 巨大なお世話

さておき、思わぬ眼福に満足しつつ外に出た我々は、温泉に入るためにホテルへ。途中の店で発見した謎の一品を紹介して、今日の日記を終えることにしよう。コレである。

飲むカステラ」って …… 普通に食えばいいじゃん。しかもソーダだし。昔売ってた「やきいもドリンク (炭酸入り)」を彷彿とさせるなぁ。