「アンソニー世界を喰らう」感想

また週末の録画鑑賞ネタ。アニメ以外で毎回楽しみにしてるのが、ディスカバリーチャンネルで放送してる「アンソニー世界を喰らう」。シェフで作家のアンソニー・ボーデインが世界中を飛び回って、その土地の料理を食べ、酒を飲み、文化に触れる …… とか書くと、いわゆる「グルメ紀行番組」のようだが、彼の旅は、もっとタフでハードだ。

もちろん、見てる方が妬ましくなるような美味い料理も食べているが、基本的には現地の一般人が普段食べている料理を食べる。当然ながら、場所によってはトンデモない代物を食べるハメにも陥る。地面で焼いた土まみれのオムレツ、生のアザラシ、巨大ネズミのシチューなどなど。しかし、それらが現地の人々のもてなしである限り、彼は決して断らない。「食のインディ・ジョーンズ」は、礼節を知る男でもあるのだ。まあ、ナレーションで愚痴ったりはするけれど。

食事以外の面でも、彼の旅は波乱に満ちている。アイスランドでは視界を奪うほどの猛吹雪に翻弄され、ベトナムでは見るからにカタギじゃない富豪のパーティで引きつった笑みを浮かべ、故郷のニュージャージーでは、日本人向けスーパーに氾濫する「ハロー・キティ」グッズに困惑する。後、ユンケルの POP で怪しく笑うタモリにも。時々演出過多になって興醒めすることもあるが、現地の文化を見るアンソニーとスタッフの視線は基本的にニュートラルなので、嫌な思いをすることなく楽しむことができる。

異色だったのはベイルート編。滞在二日目にして、ヒズボライスラエルの武力衝突が勃発。空港は爆撃で使用不能となり、アンソニーとスタッフはホテルに軟禁状態で、いつ来るかも知れない救助を待つ羽目になる。現地にいるにも関わらず、いや、むしろ現地にいるからこそ、目に見えるもの以外の情報は遮断され、不安と焦燥が募っていく。結果としてこの回は「一般人が見た戦争」を見事に映した、出色のドキュメンタリーとなった。もちろん、アンソニーもスタッフも、そんな事を望んではいなかったろうが。機会があったら、ぜひ見て欲しい。

さて、この番組のもう一つの魅力は、アンソニー本人。ヒッピー上がりの元ジャンキーでジョーク好きで皮肉屋で飲んべでヘビースモーカーという、誠に愛すべきオッサンである。海外紀行番組は、得てして他国のエキセントリックな側面を誇張したり、先進国の優越感がちらついたりするんだけど、この番組がそうなってないのは、このオッサンの人間性による部分が大きいと思う。

んで、アンソニーを初めて見て以来、私はずっと「どっかで診た顔だなー」と思ってたんだけど、最近になってようやく誰に似てるのか気付いた。何と「悪魔のいけにえ」で人肉バーベキューを作ってたオッサンに似てるのだ!特にニマッと笑ったときの表情がクリソツ。職業も同じコックだしな。うーん、スッキリしたっす。ただ一つ残念なのは、この驚きと喜びを分かち合える友人がいないことだ。ゴルコムメンバーでホラー好きなのは、私だけだもんなぁ。つーことで、今からでも遅くないから、みんな「悪魔のいけにえ」を見よう!DVDも出たことだし!そして、私の魂の兄弟になろうぜ!あ、もちろん魂の妹とか、魂のお姉様も募集中です。← やかまし