「くノ一忍法帖 柳生外伝」感想
えー、CSで「スターリングラード」を見たんで感想を書こうと思ったんだけど、かなりヘビーな内容で疲れてしまったので、代わりに「くノ一忍法帖 柳生外伝」の感想を書くことにする。「代わりがよりによってソレかい!」というツッコミが、どこからともなく聞こえてくるが、まあそれはそれとして。
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タイトルで気付いた人もいるかも知れないが、原作は山田風太郎の「柳生忍法帖」。風太郎忍法帖シリーズ最強のヒーロー・柳生十兵衛が初登場した記念すべき作品であり、ぶ厚い上下巻を一気に読ませる痛快きわまりない傑作である。未読の人はすげえ損をしているので、何としても読むべし。せがわまさきによって「Y十M 柳生忍法帖」のタイトルでマンガ化 (全11巻) もされてるんで、小説が苦手な人はそっちを読め。(命令)
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舞台となるのは江戸時代初期、将軍家光の治世。会津藩主・加藤明成は、芦名銅伯率いる芦名衆と結託して暴虐の限りを尽くしていた。国家老・堀主水は主君への諫言を繰り返したが聞き入れられず、さらに娘であるお千絵を妾として差し出すよう命じられてついに明成を見限り、一族郎党を引き連れて会津藩を退転 (脱藩) する。
激怒した明成は、異形の戦闘集団「会津七本槍」を差し向け、堀一族の男たちを捕縛させる。さらに七本槍は、男子禁制の尼寺である鎌倉東慶寺へと押し入り、主水たちの目前で、匿われていた堀一族の女たちを次々に惨殺。東慶寺の後援者である千姫の来訪によって殺戮は止められたが、生き残ったのはお千絵を始めとするわずか 7人のみ。堀の男たちも江戸で処刑されてしまう。
千姫は、お千絵たち自身の手で仇討ちを果たさせてやりたいと考え、兵法や武芸に詳しい沢庵禅師に、堀の女たちを鍛える師範役の紹介を依頼する。そして、沢庵が選んだのは、天下に名高い隻眼の剣士・柳生十兵衛三厳であった …… ってのが、原作のあらすじである。
では「柳生外伝」のストーリーはどうかというと …… これが意外にも原作にかなり忠実。とりあえず基本的なプロットは同じだし、原作中の重要なエピソードもちゃんと使っている。タイトル以外はまるで別物というパターンが多いこの手の作品としては、異例なほどである …… が、しかし。
原作を知っている人なら疑問を抱くはずだ。「でもさー、原作にくノ一出てこないじゃん?」と。そう、原作にくノ一は 1人も登場しない。だが「柳生外伝」は「くノ一忍法帖」シリーズの一編である。果たしてこの矛盾をスタッフはいかに解決したのか?答は何と …… 堀一族の生き残り 7人をくノ一にしてしまったのである!えええええええっ !? ← 自分で書いて驚く奴
だが、ここで新たな疑問が生じる。お千絵たちが風太郎流の超絶忍法を使えるのなら、そもそも師範役なんて不要なはずだ。つまり、十兵衛が登場する意味がなくなってしまうのである。ヤバイじゃんソレって。「柳生忍法帖」じゃなくなっちゃうじゃん。ひょっとして「柳生外伝」じゃなくて、「柳生以外伝」なのか?
この問題を、スタッフはさらに強引な手段で解決する。お千絵たちが忍法を使うには、自らに流れる「くノ一の血」を覚醒させる必要があるのだ!十兵衛は、彼女たちを覚醒させるための師範役として呼ばれたのである!…… って、それ忍法と違うから!イヤボーン型の超能力だから!まあ、風太郎忍法帖に登場する忍法も、たいがい超能力に近いとは思うけどさー。でも一応は血の滲むような修行の末に体得してるわけでさー。うーん、頭が痛いぜ。
では、具体的にどういう忍法を使うかというと …… えーと、ここから先は下ネタ全開になるんで、そういうのが嫌いな人は読まない方が良いです。読んでから文句を言わないようにね。
まず最初に登場するのが「忍法・紅孔雀」。これは、処女の破瓜の血を刀で飛ばして、触れる物をすべて切り裂くというもの。んむ、これは風太郎忍法帖に出てくる「赤朽葉」のバリエーションですな。ただ「紅孔雀」の場合、設定上の理由から 1回しか使えませんが。ダメじゃんそれじゃ。
とは言え「紅孔雀」はまだしも風太郎テイストを感じさせる忍法だ。しかし、2番目からいきなりエライことになってしまう。その忍法の名は「乳波動」!…… あ、お客さんどこへ行くんですかー !? 呆れないでお客さーん!いや、無理もないと思うけどー!待ってお客さん帰らないでお願いー!
(ずるずるずる ← 捕まえて引きずり戻したらしい) ふぅぅぅぅ。でね、お客さん。この「乳波動」ってのがどういう忍法かというと、オパーイから電撃と衝撃波を飛ばしまくって攻撃するという、原理不明な超忍法なんですよ。しかも、忍法を使うくノ一は結跏趺坐で宙に浮いて、トランス状態で怪しげなインド風ダンスをクネクネ踊るわ、攻撃対象は敵味方無差別だわで、そりゃもう大騒ぎ。私も初めて見たときは、我が目を疑いましたとも。
ただ、この忍法には致命的な弱点がありましてね。あ、いや、無差別攻撃もそうだけど、もっと大きな問題があるんですよ。それはですね、この忍法を使うのが、7人の中で一番胸が小さい娘だということです!ダメだろソレは!間違ってるだろキャスティング的に!そこはこう、ボインボイン (死語) な子を使ってこそ、視覚的な説得力が出るってもんだろ!ねえお客さん!…… って、あれ?あ、お客さん、行かないでお客さーん!
…… ぜえぜえぜえ (逃げられたらしい)。とまあ、そんなわけで、2番目にしてトンデモ方向へシフトしてしまった忍法は、そのまま暴走。敵である会津七本槍の一人は「ドラゴンボール」でお馴染みの気功弾 (実際にそう叫ぶ) を飛ばすし、かめはめ波 (こちらはさすがに叫ばない) まで使う始末。対するくノ一も、パカッとM字開脚した股間でかめはめ波を吸い込み、口から飛ばす「山彦返し」で対抗。オラ、何だかワクワクしてきたぞ!(自棄)
つーことで、原作の可憐でたおやかな 7人のイメージはどこへやら。せめて妖艶な魅力があればまだしもだが、ぶっちゃけ魑魅魍魎にしか見えないという過酷な現実が、見る者を打ちのめすのであった。ああ無情。○| ̄|_
だがしかし、そういった残念な現実さえどうでも良くなってしまうのが、会津七本槍。原作でも人間離れしていたが、映像化で状況はさらに悪化。なぜかデコラティブな学生服を着ている香炉銀四郎、ヘリウム吸いっぱなしみたいな声でしゃべる司馬一眼房、兜とゴーグル着用の単なる腕力馬鹿と化した鷲ノ巣簾助、色黒ってレベルじゃなくなってしまった平賀孫兵衛、犬がいなくなって、ただの猿に退化した具足丈之進などなど、視覚的なインパクト「だけ」はある面々が大暴れするのであった。スタッフにハリスでも混じってたんだろうか。
特に強烈なのは、隻腕の剣鬼・漆戸虹七郎。原作では着物の下に女物の襦袢を着るという洒落者だったのだが、「柳生外伝」では、背中に「南無妙法蓮華経」と書かれた白の着流しにスニーカー、頭は金髪のショート、そして演じるのは田口トモロヲ!「プロジェクトX」しか知らない人が見たら失禁しそうなブチキレ演技を見せてくれるぞ。まあ、「それ以前」を知ってる者からすれば「お帰りトモロヲ、こっちの世界へ」ですが、ええ。
実はこの作品、トモロヲ以外にも、その筋 (どの筋だよ) の人間なら「おお!」と驚く俳優が出ている。「ゼイラム」のイリアでお馴染みの森山祐子がお千絵を、麿赤児が天海僧正/芦名銅伯を、片桐竜次が沢庵禅師を演じているのだ。さらに、特殊メイクを原口智生が、くノ一の衣装デザインを寺沢武一が、それぞれ担当。んーむ、ある特定層の視聴者限定の豪華な布陣であるな。今ひとつその凄さが伝わりにくいのが難点だが。
んで、主役の十兵衛を演じ、さらに監督と脚本まで担当したのが、これまた一部で大人気の小沢仁志。普段はギャングとかヤクザとか暴力刑事といった役をもっぱら演じているが、今回は銃を刀に持ち替えて十兵衛を熱演している。さて、その結果はというと …… うーん、微妙。いや、さすがにアクションは上手いし、凄味もあるんだけど、風太郎版十兵衛の持つ、やんちゃ小僧のような愛嬌がないんだよなぁ。惜しいっす。
それと、演技ができる人とできない人の差が極端なのも、見ててキツイなぁ。このシリーズとしてはエロス成分も少なめなんで、そっちに期待する人はガッカリするだろうし。
つーことで、独立した映像作品としては、正直言って全然勧められない出来なんだけど、原作を知っていて、なおかつバカネタが好きな人は、機会があったら見てみる価値はあるかもだ。



